この記事は、2009-09-12 4:33:05 pmにポストしたものの再掲です。
私は特定の分野に限っては遠からず機械翻訳が人間の翻訳者を追い抜くと思っているのですが、現状はまだまだです。そんな「まだまだ」な機械翻訳を上手に使うコツを提唱されている方がいるようです。2008年9月の神戸新聞のWeb記事(2015年時点でリンク切れ)によると、 機械翻訳の精度について研究する兵庫教育大の長瀬久明教授(教育工学)によると「日英翻訳の精度は高いとはいえないが、二十ほどの“ルール”を学べば、誰でも誤訳されにくい文が書ける」という。目標は「美しい」ではなく「通じる」翻訳文だ。
例えば次の文章。「私が散歩しているとき、前を歩いていた男の人が空き缶を投げ捨てるのを見て、暗い気持ちになった」 コンピューターは、こうした長い文が苦手。長瀬さんのアドバイスに従って、文章を分割し、それぞれに主語を置いてみる。 ポイントは動詞。例文には「散歩する」「歩く」「投げ捨てる」「なる」の四つが含まれ、四つの文に分けてみる。 例文ならば「私は散歩をしていた。男の人が私の前を歩いていた。私はその男の人が空き缶を投げ捨てるのを見た。私は暗い気分になった」と修正する。日本語としてはかなり違和感があるが、こういった文章の方が訳しやすい。 とのことです。あとの19のルールがどんなものか気になりますが、同じ記事からは、
の6つしかわかりませんでした。ともかくも、これら7つは「なるほど」と思わせてくれるものばかりです。 もともと自動機械というものは、人間の動作を真似てつくられるものです。そこを出発点とし、その上にさまざまな独自な展開があって人間には真似のできないようなマシンが出来上がるわけですが、出発点は人間の身体そのものです。そういう意味で機械翻訳は人間である翻訳者の真似を上手にできていないのだと思います。しかし、ここでちょっと視点をずらしてみればおもしろいことに気がつきます。機械翻訳に当てはまる上記の「ルール」は、人間に当てはまらないでしょうか。 一般に、「わかりやすい文章を書くためのコツ」には、「ひとつの文は短く」というものがあります。その他の「ルール」も、文章の構造を明確にするための手段と考えられます。そう思えば、人間が和文英訳や英文和訳をする場合でも、こういった前処理をやっておけば原文の理解が進み、結果として翻訳が簡単になるのではないかと考えられます。 実際、関係代名詞などを多用してこみいった英語の文は、日本人にとって複数の文に分けた方がつながりを理解しやすいものです。分解しておいて翻訳し、その上で原文にあったつながりを適切に補うというのは、ひとつの有効な方法になるでしょう。 機械に対して有効な方法は、人間に対しても有効な場合があるようです。ひとつのヒントにしてはいかがでしょうか。
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