主語と述語を近づける工夫(構文の工夫)

この記事は、2007-05-29 1:53:35 pmにポストしたものの再掲です。

特に長い文章を翻訳しているとき、日本語と英語の動詞の位置の違いがスムーズな翻訳を妨げます。英語では、わかりやすい文章を書くコツとして、「修飾節を後ろにぶら下げていく」という方法が推奨されています。英語の構文ではこうすることで、文の頭に主語と述語がかたまって提示されるので、その文の大意と構造がまず読者に伝わります。その上で、追加の情報は修飾節でじっくり説明していけばいいというわけなのです。

しかし、そういった英語の「わかりやすい文章」は、日本語に訳すときに厄介な問題を引き起こします。日本語の規則は、述語が文末にあることを要請します。主語の位置は比較的自由ですが、できれば主語が文頭にあった方がわかりやすいものです。しかし、そうすれば主語と述語が泣き別れ、あいだの修飾節が長ければ長い程、何をいっているのかわからないような文章に仕上がってしまいます。

  • 例: In this article, Liu and others reports that these hydrolyzable tannins possessed activities that both stimulated glucose transport and inhibited adipocyte differentiation in 3T3-L1 cells.
  • 通常の訳文:この記事で、Liuらはこれらの水溶性タンニンが3T3-L1細胞において糖移動を活性化し、脂肪細胞分化を抑制する活性を有していることを報告している。

主語である「Liuら」と述語である「報告している」が離れ離れになり、一気に読み下すのを困難にしています。

こんな場合、もともとの英語の「読みやすい文を書く」コツの意味にまで戻って考えてみます。それは、主語と述語の位置をできるだけ文頭にかためて全体の骨格を示すことです。であるならば、その意味を汲み取って、原文の主語と述語にあたるものを前に出す工夫をしてやります。この際、それが日本語で主語、述語の体裁をとるかどうかには、拘らない方がいいでしょう。

  • 工夫した翻訳の例:この記事でLiuらが報告しているのは、これらの水溶性タンニンが3T3-L1細胞において糖移動を活性化し、脂肪細胞分化を抑制する活性を有していることである。

このように、They suggest…やHe remembered…などで始まる文は、長くなりそうなときには「彼らが提唱するところでは…」「彼の記憶によれば…」など、前置きの節として訳してやると読みやすくなる場合があるのです。


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