翻訳業裏話‎ > ‎

翻訳事務所とは

翻訳事務所を支える2種類の翻訳者たち

翻訳事務所を利用するクライアントの皆様の中には、翻訳事務所には何人もの翻訳者が詰めていて、受注した案件を次々に翻訳している、というイメージをもっている方もいることでしょう。このイメージは、半分だけ正しく、半分は異なっています。事務所によって比率は異なるのですが、ふつう、翻訳事務所は社内翻訳者(インハウス・トランスレーター)と契約翻訳者(フリーランサー)の両方を抱えています。その他にも校閲専門のスタッフ(例えば「ネイティブチェッカー」)や進行管理担当者、営業担当者、付加サービスを担当する編集者やエンジニアなど、さまざまな人員から構成されるのが翻訳事務所です。そしてそういったスタッフの中にも、社内スタッフと外部委託があります。社内スタッフの中には数種の職務を兼任する便利屋のような人がいる場合もあるでしょう。規模が大きくなれば経理その他の管理部門にも人員は必要になります。
話が逸れかけました。翻訳事務所に翻訳を依頼しても、必ずしもその依頼先ですべての作業が行われるわけではない、ということは、クライアントの皆様にも知っておいていただきたい知識です。多くの場合、社内翻訳者だけで翻訳の実務をまわしていくことは現実的ではありません。なぜなら、翻訳案件の受注には必ず波があり、その波の大きいところに合わせて社内翻訳者を抱えてしまうと、平常時には余剰人員を抱えることになって人件費がかさみ、経営を大きく圧迫するからです。ですから、通常は波の小さいところに合わせて社内翻訳者を確保し、受注が増えればあぶれた分を社外に出すようにしています。社外のフリーランサーは、安全弁として作用しているわけですね。
「社外翻訳者は信用できないからそういうのを使う翻訳事務所はダメだ」とは思わないでください。現実に、多くの翻訳事務所が社内翻訳者と社外翻訳者の役割分担によって成り立っています。ずいぶんむかしには官公庁からの定期的な案件を確保することで社外翻訳者を必要としない翻訳事務所があったのを知っていますが、現在ではどうなっているのか知りません。個人営業の翻訳事務所のなかには翻訳者本人が営業していて自分でできる範囲内の仕事しか受けないところもありますから、こういう小さな事務所も社外翻訳者は使わないといえます。そういったケースでもなければ、社外翻訳者がなければ翻訳事務所はまわしていけません。それぞれの事務所の性格によって比率は大きく異なるでしょう。社内翻訳者を一切抱えず翻訳者は全員がフリーランサーという事務所もありました。だからというわけでもありませんが、その事務所の仕事はきつかったのを覚えています。
重要なのは、社内か社外であるかではありません。品質をきちんと確保できるか、そして守秘義務などの翻訳事務所に求められる機能をきちんと果たせるかどうかです。つまりは、そのための仕組みをつくりあげているか、その仕組みが機能しているかどうかです。d-lightsが翻訳事務所として10年を迎えられたのも、そこをいい加減にしてこなかったからではないかと思うこの頃です。


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