インハウスとフリーランス

フリーランスの翻訳者で生きていくのは厳しいものです。ですから、安定した身分であるインハウス(社内)翻訳者のほうが上で、そこになれない人々がフリーランスとして社外翻訳者になるのだと、そんなイメージがあるかもしれません。けれど、それは実態とは多少ズレているようです。

私の知人に、特許事務所で翻訳者として勤務し、退職後にフリーランスとして以前の勤務先から翻訳の仕事を任されていた人がいます。元の社内翻訳者は、会社にとってはスキルが把握できている上に仕事の流れも熟知しているので、使いやすいのですね。

それでは一方的に会社の方にメリットがあるのかというと、そうでもありません。もしもそうなら、誰も会社を辞めはしないわけです。フリーランサーの最大のメリットは自由であると言われます。けれど、この自由は、経済的な安定と引き換えにするにはあまりに軽いように思えます。他にもメリットはあるのではないでしょうか。

実は、仕事さえあれば、フリーランサーは儲かります。社内翻訳者は基本的に従業員ですから、どれだけ能率をあげて大量の仕事をこなしたとしても、勤務時間に応じた給料しかもらえません。もちろん会社によっていろいろな評価システムはあるのでしょうが、基本的に時間を切り売りするのが被雇用者の立場です。ところが、フリーランサーは、出来高に応じて報酬を受け取ります。量をこなせばこなすほど、報酬は多くなります。そして仕事の効率は、スキルが上がるにつれて上がります。年功序列があてにできない専門職として勤め続けてもたいした昇給が期待できないのに引き換え、腕一本で収入を二倍、三倍と増やせる可能性があるのです。

ただし、いくら仕事の効率を上げても、肝心の受注が確保できなければ収入は増えません。受注を確保するためには複数の翻訳事務所と契約を結ばねばならず、場合によっては低単価の仕事も引き受けなければなりません。そういった困難を乗り越えてフリーランスとして活躍をされている翻訳者の方々には本当に頭が下がります。たいしたものだと思います。

私は、そんな厳しいフリーランサーとしての生活から2年ももたずに脱落しました。その後、ある企業で社内翻訳者としての経験を積み、d-lights翻訳サービスの起業に参加しました。ですから、社外翻訳者のしんどさはよくわかります。その弱みにつけこんで締めあげることが長い目で見てどんな悪影響を及ぼすのかもわかっています。翻訳者とクライアントの双方にとって納得ができるプロジェクトをつくりあげること、それがd-lightsの役割かなと思うこの頃です。


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