高価な翻訳料にあぐらをかくべきではないでしょう

この記事は、2010/04/27にポストしたものの再掲です。

以前、翻訳料金は翻訳者(や翻訳エージェント)にとっては安く、クライアントにとっては非常に高価であるという話を書きました(翻訳のお値段)。実際、気軽に利用するには、翻訳料金はどう考えても高すぎます。一方で自動翻訳がWebで無料で利用できるときに、この値段はあまりに不釣り合いです。けれど、翻訳者の側にも言い分があります。これ以上安ければ、食っていけないのです。もちろん翻訳で十分に収入を得ている方々もいらっしゃいますが、それでも濡れ手に粟のような商売でないことは確かです。訳した分しかもらえないのが、少なくとも実務翻訳の世界です。

ですから、翻訳エージェントとしては、少しでもクライアントに対する翻訳料金を高く設定したいものです。それは洋の東西を問わないようで、こんな記事(2015年時点でリンク切れ)を見つけました。翻訳料金が高いのは安心料だというわけです。高品質な翻訳をしているから高いのであって、単に翻訳をしているだけでなく、社内できちんと校閲を行っているから、その分の人件費もかかっているのだよというような内容です。

それはそうかもしれません。実際、私たちの事務所も、品質第一を謳っています。価格競争に参加して品質を疎かにするようなことだけはないようにと、常日頃心がけています。けれど、やっぱりこんな自己弁護の記事には違和感を覚えます。

クライアントの立場に立ってみれば、翻訳料金が異常に高いのは自明です。私はかつて企業に勤務して翻訳を発注する立場に立ったこともありますからよくわかります。よっぽどなことがない限り外注などできないレベルにあるのが翻訳料金です。翻訳事務所は、その事実をはっきりと認識しなければなりません。高価な翻訳料金にあぐらをかいていてはいけないのです。translationではなくtranscreationだ(創造的な仕事だから)などと開き直るべきでもありません。

もちろん、できない値引きなどするべきではありませんし、安売りをして品質を失うべきでもありません。そういった現実性のない努力をするべきだというのではないのです。そうではなく、単に当事者両側の事情を、事実として認識すべきだと思うのです。

翻訳料金がここまで嵩まなければ、まだまだ翻訳需要は多くあります。どこかで工夫が必要です。そんな工夫を見つけ出すためにも、決してあぐらをかいていいてはいけないと思うこの頃です。


Comments